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Kデンタルオフィス旭川

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旭川での新しい挑戦

旭川でのクリニック開業を考え始めたのは、コロナ禍よりも前のことでした。

「2018年頃から、分院を出すことは考えていました」

当初は札幌での開業を視野に入れ、
物件探しや融資の相談まで進んでいたといいます。

しかし、その矢先に訪れたのがコロナ禍でした。

社会全体が先行きの見えない状況の中、
新規開業の計画は一度立ち止まることになります。

それでも、「もう一つの医院をつくりたい」という思いは消えませんでした。
タイミングを見ながら、改めて場所を探し始めます。

そのとき候補に浮かんだのが、旭川でした。

しかし理想の物件はなかなか見つかりません。
古い建物が多く、思い描く医療環境を実現できる場所がなかったのです。

そんな中、建設中だった現在の建物に出会います。

「もし可能なら、この場所に入りたい」

完成のかなり前から打診を続け、
結果の連絡を待つこと約1年半。

その想いが実り、この場所での開業が決まりました。

建築士との対話から生まれた空間

クリニック設計を担当したのは、建築士の山本郁江さん。
実は、近藤先生の患者さまでもありました。

しかし、依頼の決め手はそれだけではありません。

「人生をかけた建物なので、
 友人だからという理由では決められませんでした」

まずは自宅の小さな改装工事を依頼し、仕事の進め方や人柄を見極めたといいます。

施主の話をよく聞く姿勢。
迅速で丁寧な連絡。
確認を怠らない誠実さ。

それらを感じたとき、この人となら一緒に建物をつくれると確信しました。

設計は、建築家に任せきりのスタイルではありませんでした。
ドアノブの位置から設備の配置まで、すべてを話し合いながら決めていきます。

「設計が先ではなく、
 置くものや使い方を決めてから設計に落とし込む」

そんな方法で、一つひとつ形にしていきました。

心地よさを生む細部へのこだわり

クリニックづくりで大切にしたのは、
シンプルで品のある空間でした。

患者さまにとって歯科医院は、少し緊張する場所でもあります。

だからこそ、家にお客様をお招きするような、
落ち着いて過ごせる環境を整えたいと考えました。

院内では、壁に貼り紙を極力しない。物を表に出さない。

そうしたルールを徹底しています。

配線や設備の位置も、すべて計算して設計しました。

「長く使う場所だからこそ、
 見えない部分が大切なんです」

設備の一つ一つ、収納の位置、作業の動線。

それらを丁寧に積み重ねることで、使いやすく心地よい空間が生まれました。

「毎日ここで働いていても、
 本当に気持ちがいい場所なんです」

そう語る表情からは、空間への確かな愛着が伝わってきます。

寄り添う施工

施工を担当した東成建設との関係も、建物づくりの大切な要素でした。

設計図が完成してからも、見積もりや仕様の調整は何度も繰り返されました。
物価高騰の影響もあり、一度の打ち合わせで決まることはほとんどありません。

「ここを変えるにはどうすればいいか」
「別の方法はないか」

何度も相談を重ねながら、最適な形を探していきました。

施工が進むにつれ、近藤先生も現場を訪れる回数が増えていきます。
細部へのこだわりは、完成直前まで続きました。

例えば、院内の曇りガラスの施工。

「納得いくまで三回貼り直してもらいました」

その一つ一つに丁寧に向き合い、応えてくれた施工チーム。

「本当に感謝しています。
 東成建設さんで良かったと、はっきり言えます」

未来の誰かへ

開業を考えている若い先生方には、
ぜひ伝えたいことがあります。

「若い方、どんどん開業してください。」

私自身も、もともとは勤務医でした。
勤務医として働く中で学べることはたくさんあります。
ただ、開業して初めて見える世界も確かにあります。

医院を持つということは、もちろん責任が伴います。
大変なことも多いです。

ですが、その反面、
自分が本当にやりたい医療を形にできる場所でもあります。

どんな医院にしたいのか。
どんな患者さまに来てほしいのか。
どんな空間で診療したいのか。

すべてを自分で考え、一つずつ形にしていくことができます。

責任があるからこそ、技術も、人としても、
自分自身と向き合うことになります。

その経験は、歯科医師として大きく成長できる時間になると思います。

そして、もう一つ大切なのは、
誰と建物をつくるかということです。

建物を建てることは、人生の中で何度も経験することではありません。
だからこそ、信頼できる人たちと一緒につくることが大切だと思います。

設計士の方、施工の方、たくさんの人と対話を重ねながら、
一つの場所をつくり上げていく。

その時間は、
決して簡単なものではありませんが、振り返ると、とても意味のある時間でした。

もし開業を迷っている方がいるなら、
臆することなく、ぜひ一歩踏み出してみてください。

自分の人生と向き合うという意味でも、
開業という選択は、きっと大きな経験になると思います。

そしてその場所が、
患者さまにとっても、自分にとっても、
大切な場所に育っていくことを願っています。

——Kデンタルオフィス旭川
院長 近藤 吟子

お客様

医療法人社団 Smile Concept
Kデンタルオフィス旭川

院長 近藤 吟子

https://kodomo-dentalclinic.jp

プロフィール

院長 近藤 吟子
1999年 日本歯科大学生命歯学部 卒業
2013年 近藤歯科医院 開院
2021年 医療法人社団近藤歯科医院 理事長就任
2025年 旭川駅前に「K Dental Office Asahikawa」 開院

〒070-0031 北海道旭川市1条通7丁目47−1 
プレミスト旭川ザ・タワー 2階 Tel 0166-23-1755
・診療時間 
 月・火・木・金 / 9:30~18:30(昼休み 13:00~14:30)
 水・土 / 9:30〜13:30
・休診 水曜午後、土曜午後、日曜、祝日

設計士

株式会社トコト一級建築士事務所

山本 郁江

https://tocotodesign.com/

プロフィール

1984 北海道生まれ
2008 北海道大学工学部建築都市学科卒業
2008-2012 清水建設株式会社設計部勤務
2012-2015 株式会社アトリエ・天工人勤務
2016 一級建築士事務所tocoto開設
2022- 東北工業大学 非常勤講師

〒078-2600 北海道雨竜郡雨竜町字満寿25-248

編集後記

今回の取材を通して印象的だったのは、近藤先生の「迷いのない言葉」でした。

歯科医師としての歩み、旭川での開業という決断、そして医院づくりへの考え方。
そのどれもが、長い時間をかけて積み重ねてきた経験の中から、自然と言葉になっているように感じました。

特に印象に残ったのは、「若い方、どんどん開業してください」という言葉です。
開業には大きな責任が伴います。しかしその一方で、自分の理想とする医療や空間を形にできる、かけがえのない機会でもあります。実際にお話を伺いながら感じたのは、このクリニックが、そうした思いの積み重ねの中で一つひとつ形になっていった場所なのだということでした。

設計、施工、そして医療。さまざまな専門家が関わりながら、一つの場所が生まれていく。その過程には、図面や数字だけでは語れない物語があります。

DESIGN WORKSでは、これからもそうした「建物の背景にある物語」を一つずつ記録していきたいと思います。

今回ご協力いただいたKデンタルオフィス旭川 近藤吟子先生に、心より感謝申し上げます。

文筆家・ライター/林孝治

DATA

医療法人社団 Smile Concept
Kデンタルオフィス旭川

〒070-0031 旭川市1条通7丁目47−1 
プレミスト旭川ザ・タワー 2階

https://www.kdentaloffice-asahikawa.com

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